「これまで経験したことのない」災害―いつ、どこで、誰が遭遇してもおかしくありません。今年の夏はエルニーニョ現象、それもスーパー級との予測もあり、記録的猛暑や大型台風の襲来、豪雨などが心配されています。
◆『天気のからくり』(坪木和久、新潮社、2025年)を読んで
本書は、気象の教科書でも専門的な解説書でもなく、“お天気のからくり”の謎を“なるほど、そういうことだったのか“と思わせる切り口で解き明かしてくれる一冊です。
いつもの「読書考」のように、印象に残ったところから三つほど紹介します。
1 台風の「暴風域」はどこにある?(p.31)
台風では反時計回りに風が吹きます。北上してくると、円の右側では回転する風に移動速度が加わって強い風になり、左側では逆に引き算で弱まるのでほとんど暴風災害は起こっていません。
台風の勢力を人為的に弱めるという考え方もありますが、実現には科学だけでは解決できない社会的・国際的な問題もある(p.224)そうです。
2 「集中豪雨」は大気の破壊現象(p.43)
集中豪雨は、発生過程やメカニズムを統一的に説明することは難しい現象です。積乱雲が次々と発生して帯状に連なると「線状降水帯」となり、豪雨をもたらします。しかし、その一連の仕組みはいまなお解明の途上にあるといいます。
3 進む地球温暖化―「猛暑は上から」(p.81)
気象災害のなかで最も死者数が多いのは熱中症です。高気圧が発達すると、雲のない青空で日差しが強くなり、しかも下降気流が気温をさらに上昇させます。そこにフェーン現象が起こると記録破りの猛暑・酷暑となります。
日本付近の気温は、地球全体の平均より2倍の速さで上昇しているとのことです。
◆ 私は、中学生のころ、梅雨明け前日の集中豪雨で近くの堤防が決壊、濁流が押し寄せ身の危険を覚えた経験があります。避難が少しでも遅れていたら―そう思い出すたびに、恐怖心が蘇ってきます……。また、一昨年は熱中症になり、強い吐き気と頭重感(ずじゅうかん)に襲われる苦しさを体験しました。
天気は私たちに豊かな恵みをもたらしてくれます。しかし、ひとたび牙をむけば生命を脅かします。
本書は全253ページ。毎日の天気予報を「そういうことだったのか」と、これまでより深く理解できるようになる一冊です。
