【医書同源 読書考㉘】『井沢元彦の戦乱の日本史』(井沢元彦、小学館、2009)を読んでみた―〈戦略大局・戦術小局〉の歴史を学ぶ!

読書考

◆ かつて、著者の『猿丸幻視行』(江戸川乱歩賞受賞、1980)を沈読したことがあります。以来、時々、井沢作品を読みます。今回は、この「戦乱の日本史」の中から井沢歴史観の一端を見てみましょう。

1 幕末・維新のころ
①「佐賀の乱という『ミステリー』」(p.188)
「佐賀の乱」で知られる初代司法卿の江藤新平は、じつは「乱の首謀者」どころか維新政府内の不正・腐敗に立ち向かう人物であったと評価するべきと指摘しています。

②「上野戦争―隠れた主役 佐賀藩」(p.166)
倒幕で目立たなかった佐賀(肥前)の「肥」がなぜ「薩長土肥」という雄藩代表の一つなのか?上野戦争で勝敗を決めたのは佐賀藩の持つ「アームストロング砲」だったからとのことです。

③「天狗党の争乱―勝算なき戦い」(p.138)
著者によると「戦術論」でいえば「勝算なき正義の戦争」がある、まさにそれが「天狗党の乱」。この乱は、当時、なぜ攘夷は開国・近代化に転じたのかを深く考えさせてくれます。

2 「毛利元就伝―『三本の矢』神話はなぜ生まれたか」(p.28)
元就を「戦国謀略王」と呼ぶ著者。敵方の団結を崩すのも、やはり一族の強固な団結、その長けた戦略が毛利家の「三本の矢」という神話になったらしいのです。

3「日清戦争の意義」(p.198)
日本には「戦争絶対否定論者」が多い。日本は未だに「過去の戦争は悪」という「罪悪感史観」から抜け出せていない。しかし清国を倒した日本の勝利は、中国を含むアジア全体の近代化への道を開くことになった、と。

4「応仁の乱から見た『平和論』」(p.232)
司馬遼太郎の「平和念仏主義」ではないが「平和」を唱えるだけでは平和は実現できない。「手練手管」(戦略・戦術)が要る―なぜ「応仁の乱」が大乱となったのか、徳川家康が豊臣一族を根絶したのはなぜかなどなど、歴史に学ぶ意義は大きい、と。

◆ 著者は、いわゆる歴史学者ではありませんが、しかし作家でなければ見えない歴史の真実、日本人の本質を語っています。
この頃、よく聞く言葉に「戦後80年、新しい戦前の始まり」があります。「戦争と平和」を考える上で、本書はよき参考となるでしょう。

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