2023年10月、ハマスによるイスラエル攻撃を発端とした戦争は、中東全域を巻き込み、さらに全世界に計り知れない不安と脅威をもたらしています。
今年、1月18日、日本経済新聞の社説は「トランプ氏はこれ以上世界壊すな」というものでした。しかし、その後トランプ政権の本格的な介入も加わり、もはや誰にも止められない悲惨な状況となっています。
◆『世界史劇場 中東戦争の泥沼』(神野正史、ベレ出版、2026年2月)を読む
・これまで何度も繰り返されてきた中東戦争。本書は、その歴史を軸にした全7章構成で書かれています。そして、“アニメーション”を観るように挿絵や地図パネルがふんだんに使われていて、理解の助けになります。
・詳しくは本書を読んでいただきたいと思いますので、ここでは、私なりの理解も交えつつ、とくに印象に残った点を紹介します――
1 かつて、イギリスは世界覇権を握る超大国だった
イギリスがスエズ運河に異常なほど執着したのは、世界支配への布石でした。ジブラルタル海峡やホルムズ海峡、マラッカ海峡など狭い通過ポイントを押さえた国は圧倒的に有利になる。他国の船に「通行料」を課すこともできる。広大な世界の海に艦船を浮かべる必要はない。
2 なぜ、「中東問題」が発生したのか
19世紀末、「故郷(パレスティナ)に帰ろう!」という「シオニズム運動」が始まり、世界中に離散していたユダヤ人がこの地に集まってきた。国際政治の面では、スエズ運河を確保したいイギリスが強い影響力を行使し、財政面ではユダヤ系財閥のロスチャイルド家が重要な役割を果たした。
しかし、この地には2000年にわたってアラブ系パレスティナ人が住んでおり、現在まで続く“中東問題”の元になった。
3 核兵器は「使えない兵器」
核兵器の価値は脅し(ブラフ)に使えるくらいで、実際には使用できない。その理由は、核保有国同士が核を撃ち合えば世界が滅ぶからであり、仮に、核兵器を使うにしても限定的にならざるをえない。だとすれば、わざわざ核を使うほどの効果はない。むしろ、核を使えば、その国は国際社会から完全に孤立し存続すら危うくなる。また、「独裁者」が使用を命じることがあっても部下が従うとは限らない。
◆ 冒頭に触れた日経社説は、1月時点で「国際秩序は瓦解の瀬戸際に立つ」と指摘していましたが、いまやその「瀬戸際」を越えて“瓦解”が始まっています。
・「油上の楼閣」とも言うべき日本――地政学的に見ますと、日本にとって中東問題は死活的な“石油問題”でもあります。「石油を支配する者は世界を制する」という言葉がきわめて重くズシリと響いてきます。
・戦前の物理学者・寺田寅彦は「天災と国防」のなかで、次のように述べています――“天災の襲来は科学の力で止められない”のに対し、“戦争は人間の力で避けられなくはないであろう”と。
人間のひき起こした戦争は、人間が止めるしかありません。一日も早くその日が訪れるのを願っています。
