【 医書同源 読書考⑩後編6~10】「ひと月10冊」『パーパス経営―30年先の視点から現在を捉える』ほか

読書考

2024年も残りわずかとなりました。今年4月に本ブログを開設して以来、多くの皆さまにご覧いただき、心より感謝申し上げます。この一年を振り返りますと、私は夏に新型コロナウイルスに感染し、その後は熱中症にも悩まされるなど、健康面で試練の多い日々を過ごしました。「病は馬に乗って訪れ、歩いて帰る」という言葉がありますが、健康の大切さを改めて実感する一年でした。
新年は1月17日(金)よりブログの更新を再開したいと思います。
皆さまにおかれましては、どうぞご自愛いただき、良いお年をお迎えください。

6『パーパス経営―30年先の視点から現在を捉える』(名和高司、東洋経済新報社、2021) 著者は一橋大学ビジネススクール客員教授

本書は、たんなる「経営(学)の書」にとどまりません。資本主義の次にくるものは「志本主義」であると提示しています。経済社会の基軸は「資本」=資産から「志本」=心へ進化するべきであるとの考えです。著者は、今日の病める企業経営―経済社会の核心部分に「志」(パーパス)を据えることで、その新たな再生と発展を図ることができると期待しています。本書は、企業経営者のみならず多くの方々に幅広く読まれて欲しい労作と思われます。

7『キャッチコピーのつくり方』(川上徹也、日本実業出版社、2024) 著者はコピーライター、湘南ストーリーブランディング研究所代表

世の中には、さまざまなキャッチコピーが溢れています。著者は、読者に「一瞬で心をつかむ、一生役立つスキル」を身につけてほしいと願っています。「おいしい生活」(西武百貨店)や「駅前留学」(NOVA)など、一見言葉は平凡でもなぜ印象に残るのでしょうか。本書は、訴求性の高い刺さるコピーをつくるための著者独自のアイデアが満載です。

8『~暮らしを楽しむ~ 季節で巡る 日本の祭り』(久保田裕道、神宮館、2024) 監修者は民俗学者、独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所無形民俗文化財研究室長

八百万(やおよろず)の神様を信仰してきた日本人。本書は、全国各地の「祭り」を紹介しています。青森ねぶた祭、岐阜の高山祭、長野の御柱(おんばしら)祭、長崎くんちなど、カラー写真入りの解説です。また、祭りの「用語」・「道具」や「流れ」、「歴史」についても、ふりがな付きで説明があり、とても助かります。本書をガイドに、旅がてらどこかの祭りを訪ねてみるのもいいですね。

9『大学図書館司書が教えるAI時代の調べ方の教科書』(中崎倫子、BOW BOOKS、2024) 著者は昭和女子大学図書館司書、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員、NewsPicksトピックスオーナー。

私たちは、なにかものを書いたり考えたり、また身の回りのちょっとした気がかりなことなどのため調べものをします。学生なら課題レポートや卒論の作成があります。そこで利用するのが「知と情報の宝庫」―図書館、AI・ネットなどです。経験豊かな著者は、どのように欲しい情報、資料を効率よく集めて整理し、いかにアウトプットに繋げたらよいのか、懇切丁寧に教えてくれます。本書は、学生から一般社会人までを対象にした「情報リテラシー」の指南書です。

10『アメリカはなぜ日本より豊かなのか?』(野口悠紀雄、幻冬舎、2024年8月刊) 著者は一橋大学名誉教授

著者によると、「アメリカの豊かさの源泉は、異質なものへの寛容と多様性の容認」にあります。一人当たりGDPでは、アメリカは日本の2.2倍ほど豊かです。格差の原因として、野口氏は①日本社会の仕組みでは古い産業構造からの脱却が難しい ②円安に安住し技術開発を怠った ③低金利政策が続き生産性の低い投資しか行われないなどを指摘、はたして氏はどんな打開策を用意しているのでしょうか。著者は最後に、もし、トランプ氏が「大統領再選」となれば「寛容性が失われる」と述べて、それに対する備えが必要であるとも説いています。本書刊行後、トランプ氏が当選しました。大国アメリカはどこへ向かうのでしょうか。

※「医食同源」は身体の栄養、「医〈書〉同源」は心の栄養かなと思います。

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