6『進撃のドンキ―知られざる巨大企業の深淵なる経営』(酒井大輔、日経BP、2024) 著者は日経BPロンドン支局長
あちこちの街中で「驚安の殿堂 ドン.キホーテ」の看板を見かけるようになりました。まさに快進撃のドンキ、創業35年にして、いまや売上高2兆円を超えます。著者は、既成の権威に屈しないドンキ独自の経営理念、戦略―「主権在現」(現場への徹底した権限委譲)、「圧縮陳列」方式、「ポップ洪水」といった、従業員に裁量を託したユニークな国内外の店づくりを次々と紹介しています。業界の異端児ドンキの大躍進に、文豪セルバンテスもさぞ驚いていることでしょう。
7『図解 渋沢栄一と「論語と算盤」』(齋藤孝、フォレスト出版、2020) 著者は明治大学教授
今年7月、新1万円札に登場した渋沢栄一は、私たちにとってグッと身近な存在になりました。著者は、一億総中流から富裕層と貧困家庭に二極化してきた現代の日本社会を見て、渋沢は「驚きを覚える」のでは、と述べています。本書には、新1万円札を見るたびに「みんなが益するような社会にしたい」という願いが込められており、これまでの『論語と算盤』の解説書とは異なり、渋沢の生きざまを通して、読者に真に公正な社会とは何かを訴えかけています。
8『宇宙はなぜ面白いのか』(北川智子、ポプラ社、2024) 著者はJAXA東京事務所勤務
低緯度の日本で2024年5、10月オーロラが観測され、とても驚きました。本書では、宇宙に関する多彩な話題が最新の観測データや知見に基づいて詳述されています。「宇宙資源の活用」や「隕石衝突の回避」、「ビッグバンとダークエネルギー」、「地球外生命体の可能性」など、宇宙の謎と神秘に魅せられます。本書を手に、夜空を見上げながら、宇宙に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
9『超大国インドのすべてがズバリわかる!』(榊原英資・小寺圭、ビジネス社、2024) 著者の榊原氏はインド経済研究所理事長、小寺氏はタイガーモブ(株)取締役
インドはグローバル・サウス(新興・途上国)の代表国であり、人口世界一の経済大国、まもなくGDP世界4位に躍進すると予測されています。本書は、榊原氏と小寺氏による対談形式でインド事情を深堀りしています。全9章の構成で、第3~4章ではイギリスのスナク前首相のような「世界で活躍するインド人(印僑・その子孫)」や、スズキ、ソニーといった「日本企業のインド進出」の事例などが取り上げられています。インドの現状と今後の動向に大いに注目したいものです。
10『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン なぜ、わずか7年で奇跡の対話型AIを開発できたのか』(小林雅一、朝日新聞出版、2024) 著者はKDDI総合研究所リサーチフェロー
世界的な生成AIブームを背に2024年10月、「AIの父」ヒントン氏らがノーベル物理学賞を受賞したとの報が伝えられました。アルトマンは、AI技術の発展に貢献しChatGPTを開発したOpenAIのCEOとして知られています。著者は、アルトマンの起業家としてのキャリアに焦点を当てながら、OpenAIの前史、その誕生と進化を克明にフォローし、AIそのものの今後の可能性と危険性にまで踏み込んでいます。GAFAMなどIT業界のしのぎを削る内幕も明らかにしており、最新AI事情を知るうえで欠かせない一冊と言えるでしょう。
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※「医食同源」は身体の栄養、「医〈書〉同源」は心の栄養かなと思います。