【エコノゼミナール 資本主義って、何だろう?③】B.ミラノヴィッチ『資本主義だけ残った』を読んでみた

エコノゼミナール

・明けましておめでとうございます!旧年中は大変お世話になり、ありがとうございました。本年もどうかよろしくお願い申し上げます。

 今回のポイントは――
①「資本主義」は「永遠に不滅」?
②「資本主義」の多様性;アメリカ型VS.中国型 

(ゼミ長) 今日はブランコ・ミラノヴィッチ『資本主義だけ残った』(西川美樹訳・梶谷懐解説、みすず書房、2021年)取り上げてみましょう。村上さん、始めてください。

(村上さん) 本書のタイトルをみて、「あぁ~そうなんだぁ」って妙に感心しちゃって読んでみたんだけど。
(ゼミ長) うん、いいんじゃない。「残った」って何か小説みたい、どんなだった?
(村上さん) もとはCapitalism,Aloneだから、「残った」でも「不滅」でもいいのではと感じるけど……
(先生) なるほど~、じゃぁ、内容の紹介といこか。
(村上さん) はい、資本主義について、このレジュメのとおり私の選んだ論点ですが、それは――
❶資本主義はローマ帝国の時代からある、❷「格差」と「腐敗」が資本主義の特徴、❸格差はアメリカ型の「リベラル能力資本主義」、腐敗は中国型の「政治的資本主義」に顕著、❹資本主義に代わる「選択肢」はない、と四つあります。

(ゼミ長) へぇ~、そうなんだぁ。先生、このような資本主義観、どうでしょうか。

はい、彼については、一度ゼミでもちょっとだけ触れたけど、資本主義の基本は「私的な生産様式」とシンプルに捉えていて、その本質を「拡大傾向にある」と思ってるよ。あんまりハッキリしないけど、ローマ帝国に始まって今日まで長い時間かけてグローバル化しながら成長してきたんだ、というような独自の歴史観を持ってるみたい(pp.2-4 参照)。
これって、壮大すぎて驚くけど、彼なりの資本主義「生き残ってきた」観ってわけだよね、、、。資本主義は永遠に不滅だって思ってるんじゃない?

(村上さん) 資本主義の特徴として「格差」と「腐敗」の問題を指摘しているんでしょ?

そうだねぇ、トマ・ピケティの『21世紀の資本』でも国際社会の所得格差の拡大が明確になってたけど、ミラノヴィッチは、アメリカでは金持ちが高額の「労働報酬」も得て一段と格差が大きくなっていると強調してる。

中国社会に特有な問題としての腐敗については――
「共産党」支配のもとで機能する官僚組織は非常に強い権限を持っていて、法の秩序は建前でしかない、権力そのものが富を生み出すため腐敗が蔓延しやすくなる、とみている。

アメリカの「富が権力を牛耳る」ことによる深刻な〈格差問題〉に対して、中国では「権力が富を生む」ことによる〈腐敗問題〉があるということだろうね。いずれもきわめて根の深い問題。現在は、トランプ政権の再登場で、米中どっちもどっちの独裁的「強権国家」になって、ぼくには違いがよく分かんなくなっちゃったよ、、、。

(ゼミ長) 「共産党」も「共和党」も憲法の上に立っているみたいですね。ミラノヴィッチは両国の今後については、どう見通しているのでしょうか?

アメリカでは所得不平等度の拡大、そしてその世代間継承に対する是正策として――たとえば、所得課税の累進度を強める、教育への公的支援を厚くするなどの措置が考えられるとしても、富裕層の政治的反発に直面するのは避けられない、といわば「民主主義の機能不全」を嘆いているよ。

中国については、腐敗の根絶には悲観的な見方だけど、経済に関しては社会主義革命を経て、その後資本主義を導入し高度成長を実現してきたと評価。「経済的成功」は、これからも持続するのではないかとみているけど、、、。

(村上さん) 当面の中国は大変な状況なんですよね。

はい、中国の建設・不動産不況は2021年頃からで、当時、本書を書いた彼がこの厳しい不況を知らなかったのは仕方ない。
中国資本主義は、コロナ禍に続く不動産不況の追い打ちで個人消費が低迷、加えて強い供給過剰圧力に苦しんでる。

今、5%成長がやっとかな。「三人っ子政策」を導入したけど、人口減で「少子高齢化」が進んでいるし、もう二桁成長どころかマイナス成長となってもおかしくないでしょう、、、。ハッキリ言ってGDPの米中逆転はないと思います。

中国国家統計局のデータを見ると、昨年上半期(1~6月)の消費者物価は、前年同期比でマイナス0.1%と、主要国では中国のみデフレが続いた。下半期にやや改善されたとはいえプラス0.2%程度。まだまだ「デフレ不況」ともいえる状況だよね。

また中国は「民主化しなければ経済成長は止まる」との言説もよく聞くけど、〈民主化してもしなくても止まる時は止まる〉よ。だって、異形の中国版とは言っても「資本主義」なら「経済変動」は避けられないし、、、。共産党支配の体制で資本主義が息づいている証明だもの、そうそう簡単にコントロールできるものではないよ、、、。

(村上さん) ミラノヴィッチは、このままずっと中国資本主義は続くとみているのでしょうか?

彼によると、資本主義を導入するという「共産主義の役割」!―「共産党の役割」とは言っていない―が終わった。共産主義には未来はなく「過去のシステム」でしかなかった、と言い切ってる。その上で「資本主義は進化していく」との思いを語っているけど、これからどんな形になるのか、彼は残念ながらほとんど論じていないなぁ、、、(pp.265-266 参照)。

本書は、ぼくたちが現代の世界情勢や社会の仕組みの何が核心の問題なのかを考える上で、視野も広いし参考になる一冊であることは確かだと思います。

(ゼミ長) 今回は、以上です。村上さん、今日はありがとう!「ピンポーン、パンポーン♪」 では、またね!
※ ミラノヴィッチは、1953年生れ、アメリカの経済学者

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