(ゼミ長)景気理論の2回目です。では、始めましょう!
(先生)はい、前回のファンタスティックな「太陽黒点説」に続く第2弾。超有名な「過少消費説」です。今の世の中、いちばん支持者が多いんじゃないかな?
❷「過少消費説」(マルクス、ケインズなどの考え)
なにしろ、景気が悪いときは売れてないからね、消費が足りないと思うのは自然。これって常識じゃない?ゼミのみんなも、この説、よく聞くでしょ?
(ゼミ長)はい!でも、先生、それは作り過ぎたんじゃないですか?
ふむ、ふむ、ごもっとも!「過少消費」説は消費不足が原因で生産過剰が結果と考えている。個人消費はGDPの50%超も占めてるもん、過小評価できん。この消費を超えた生産過剰を原因と考えるんやったら「過剰生産」説だよね。
ほら、有名な「セーの法則」だけど「供給はみずから需要をつくり出す」といって需要不足による不況を否定しているのを思い出すよ。経済学者たちは、どうも、供給サイドよりも需要不足をジュウヨウ視してきたんかな。
(松尾くん)なるほど、この説は誰が唱えたとでしょうか?
えーっと、ぼくの推ス代表格は、マルクス(『資本論』)とケインズ(『一般理論』)。
ごくごく簡単に言えば、マルクスには「労働者の貧困」(窮乏化法則)による消費不足を説いた「資本蓄積論」があるし、ケインズは「有効需要論」で所得の一部が消費されず「貯蓄」にまわる(消費性向の低下)ことに注目。
両者とも不況の原因を「過少消費」(需要の不足)に求めているよ。
かつては「高度大衆消費社会」「三種の神器」(1950~60年代、神武・いざなぎ景気)とか「消費大国・日本」「道楽消費」(1980年代、バブル景気)なんて、昭和人には懐かしいド派手な言葉もあったけど…。
今じゃ、少子・高齢社会―成長経済も店じまいで、もっぱら聞くのは、もったいない精神の「消費ミニマリズム」だの「モノを持たない豊かな(?)生活」、「財布なしで生きる」、ムダのない「エシカル(倫理)消費」に「断捨離」だもん、しょうひし(どうし)ようもないねぇ。
それはそうなんだけど、そもそも庶民には金銭の余裕なんてじぇにじぇに(ぜんぜん)ないから、マルクスに親近感を持つ考えなども繰り返し再生されるんだろう。
ここんとこ、やっと賃金(初任給も)は上がってきたけど、物価の上昇が止まらないので消費は増えず、増えるのは負担ばっかり。相変わらず経済は低迷気味、ただし株価は日本でも上がっているね。
こんな「勤労所得」(g)<「資産所得」(r)のトマらぬ格差拡大を指弾したのがピケティの『21世紀の資本』だった。
物価の上昇を上回って賃金が上がっていく/いるのかどうか、しっかりマルクス(マークす)る必要があるんじゃない?
新聞には「チープフレーション」なんて言葉が出てるよ―低価格帯の商品ほど価格上昇率が高いらしい、、、。ぼくの大好きな卵もバナナも(日経、25年2月26日)
(井上くん)そんなんですと、いっつも消費不足で「慢性不況」みたいになりそうですが、、、。ケインズはどうなんですか?
はい、ケインズは、1929年大恐慌に続く30年代の大不況期、深刻な需要不足に対して、政府による有効需要拡大策を提起した資本主義の救世主ですよね。戦後資本主義は、このケインズ路線で走ってきたんだけど、経済を支える財政の「ケインズ効果」もだんだん降下して、怪しくなってきた。
令和7年度予算(案)をみると、過去最高額115兆円。日本もずーっと借金を続けていて、国債残高はなんとGDP(630兆円見込み)の1.8倍(1,130兆円)にも膨らむケ、イ(ケ)ンズ(いけない)よ、、、。
「大恐慌」の代わりに「大赤字」―どっちも財政運営は箱根八里の難所!?〈やだねったら、やだねぇ〉。
もう、これ以上の予算増はヨサンといかんのじゃないかな、国家破産しそうでハサンハサン(はらはら)するよ、、、。大規模災害も多いし海外からの政治的圧力や経済的な衝撃もある、イザというとき財政出動できるんかいなって、ホンマ心配。
(ゼミ長) 「103万円の壁」「教育無償化」だけでも、あんだけモメテんですもんねぇ、、、。国会のタイパ、コスパ、悪すぎませんか。もう、どーんとデッカイ景気はやってこないんですかね?
うん、「壁の中」の永田町!ポリパ(ポリティカル・パフォーマンス:政策決定の効率)を高めてもらいたいね!
先々の景気のことは「神のみぞ知る」領域だけど、どうなんだろう、、、。ぼくらもいろいろと財政や経済の持続可能性を探究していこうかのう!
苦し紛れに?大胆すぎる「財政引締め」とか、逆に「財政支出拡大」を声高に叫ぶエコノミストもいるみたいだけど、根拠のない無責任楽観論に聞こえて仕方なかぁ、、、。
「中庸」が信条のイゴノミストのぼくには、やっぱり、財政は小さすぎず、大きすぎずの「中くらいの政府」が安心やけど。
(ゼミ長)今日の「過少消費説」のお話、私は、資本主義の核心にちょこっと触れたように感じました。「ピンポーン、パンポーン!」
※画像は、マルクスとケインズ。ダイヤモンド・オンラインより(一部修正)