◆ 「コミュニズム神話」―「第三の道」について
⑤ 斎藤説は「ソ連型社会主義」の焼き直しに過ぎないのだろうか?
(先生) もう梅雨明けっぽいね、暑さ対策は扇風機?エアコン?もし、エアコンだったらその使い方、みんなどうしてる?リモコンに「(AI)快適自動」とかあると、それを押せば電気代も節約できるみたいで、ぼくそれやってるよ。
(ゼミ長) そうですか?物価高のご時世、いいですね。では、『人新世の「資本論」』の検討、10回目、先生、お願いしま~す。
は~い。ソ連は崩壊したし、中国だって「国家資本主義」になっちゃったわけだよね、そこで斎藤さんは脱成長の「第三の道」を思い付いたんだろうけど、、、。
(高橋さん) その「第三の道」ですが、選挙で進んで行けるんでしょうか。
さぁ~ねぇ、、、。「協同組合」の活動を広げてスンナリ行けそうな口ぶりなのに。「選挙で革命は素朴」だって言ってる。チグハグや、、、。
大事なことなので、もう一度振り返るとさ、斎藤さんはこんなふうに書いてるのを見たよね(②―1参照)――
変革の鍵は「投票行動」・「議会政治」ではなく「資本と対峙する社会運動」であって、「資本主義と、それを牛耳る1%の超富裕層に立ち向かう…困難な『闘い』になる」。「3.5%の人々」が「本気で立ち上がると、社会が大きく変わる」、「大胆な決意とともに、まずアクションを起こしていく」、とねぇ。
それだったらさ、ぼくたちじゃなく、真っ先に「放埓な超富裕層」に〈資本主義が終わる前に地球が終わる!何とかしてくれ~っ!〉て、叫んでほしいよ。
(高橋さん) やっぱり、斎藤説は、昔ながらの「社会主義革命」論なんでしょうね。
うん、確かに、そうだね。ハッキリ「選挙政治は限界」(p.215)と書いてる。社会の変革は3.5%の得票ではムリでも、 実際のアクションなら3.5%でも可能というけど、どうしてなのかな。
圧倒的多数の96.5%の人たちの意思はどうなってるんだろう?ご本人は「参加型民主主義」(p.335)を推奨してるんやけど…
本気とか決意とか…まるで生々しい「革命闘争」って感じ、、、。
なるほど、選挙で負けた政党が「わが党の主張(公約)が選挙民に理解されなかった」と悔しがるのを聞いたりするよねぇ。
責任逃れの言い訳なんかな?国民には「まだ、分からんのか」って言われてるように聞こえるし、独善的なウサン臭さがしない?評判、落とすのが「分からんのか」な、、、。
(田中くん)「第三の道」は、「唯物史観」とどない関係してるんでしょうか?
「本書は資本主義から離れ、脱成長のコミュニズムに移行する必要性を擁護してきた」(p.278)と書かれている。
なるほど、資本主義との決別と次の社会への「移行」の「必要性」が語られている。だけど、それってさ、次の社会への〈移行の必然性〉ではなく、別の社会への〈方向転換〉じゃない?
斎藤さんは、マルクスの「唯物史観」を「生産力至上主義」だと否定(pp.152-155)、「第三の道」を提起した――
というよりも、「資本主義」社会はいつでも「脱成長コミュニズム社会」に「置き換えられる」(p.56)と言うために唯物史観を否定したんだね。ヘーゲル流の「観念史観」に後退したみたいや。
現代社会を転換したいのなら、ズバリ「資本主義廃止で温暖化阻止!」を総選挙などの一大争点にして、「第三の道」と称するグローバル新党を立ち上げたらいいかもね。今、新党ばやりだもん。
民意を問わないで「コミュニズム社会」に置き換えるなんてできないよね。
なにしろ「私的所有」を「共有」という「社会的所有」(p.354)にするというのだから、簡単な話じゃなくて、いろんな意見があるでしょ。
まぁ、斎藤さんは、「協同組合」社会や「連合社会」、「参加型社会主義」、「別の社会」、「新しい社会」、「将来社会」などなどの言葉を文脈に応じてトリッキーに使い分けて――
その上で「共産主義」よりも「コミュニズム」の用語を多用、「脱成長」の冠も付け「転換」とか「分岐」、「移行」、「横滑り」とかいろいろ言ってるんで、ひどく論理が乱れて感じるねぇ、、、。
ともかく、人類史上、「社会主義」へ歩もうとしたのは、ロシアや中国にしても、生産力の低い未発達の国だったのだから、斎藤さんが「進歩史観を完全に捨て」(p.326)たと言わなくても、歴史によって否定されてるよ。先進国革命の実例もないし。
(田中くん) 結局、斎藤説は「ソ連型社会主義」の焼き直しなんでしょうか…
そうですね!ソ連型「国有化」を協同組合型の「共有化」に代えてるけど。
でも、「資本を打倒」し「私的所有」(の生産関係)を廃止する、という中身は全然同じだよ。
まさに「コミュニズム神話」のなせる業!
死せるマルクス、現代人を走らせる!
気候危機が資本主義の問題に見える人もいるけど、この危機は、現代社会に課された、みんなで解決するべき問題!ってことですよ。
(ゼミ長) このシリーズ、そろそろ終わりに近づいているようですが…「ピンポーン、パンポーン♪」(先生:はい、次回テーマは、あの「社会主義」は何だったんだ!)
画像 ホッキョクグマ 環境省HP