【イゴノミクスの世界 Igonomics World ③】現代経済―「イゴノミクスの世界」〈格言と法則〉で読み解く!

イゴノミクス

インフレなのに、「デフレ対策」の看板を放置?

囲碁には相手の石を「シチョウ」に取る―ただし、相手の石が味方の石の「シチョウアタリ」に繋がると逃げられる(図参照)―という遠巻きの作戦があります。これを、日銀・政府の「デフレ脱却」政策に当てはめてみましょう。

周知のように、日銀は、バブル崩壊後の「デフレ不況」に、2013年以降、「インフレターゲット政策」で対応することにして、消費者物価を2年間で2%上昇にするという目標を掲げていました。

私は、この日銀の政策を囲碁の「シチョウ」作戦(ここでは、「シチョウアタリ」は物価上昇率2%目標)に喩えてみました。
アタリ(もう一手で相手の石が取れる状態)をかけられる石は、物価の下がる「デフレ」であり、アタリとは日銀による通貨の供給(紙幣の増発)のこと、逃げる石は物価上昇率です。

ですから、デフレを克服し目標の2%に届くまで、日銀はアタリをかけ続け物価の上昇を促すことになります。目標に達すると「インフレターゲット政策」はやめる、ということになります。

上の碁が「シチョウ」の図。Aと〇印の白石にアタリをかけると、B→C→D→E→F→G→Hと進んで、逃げる白石は天元のすぐ上にある味方の△の白石(これがシチョウアタリ)に繋がって助かります。シチョウは「四丁」「征」などと書き、英語ならladder(ハシゴの擬態語)と表しています。

実際に目標の2%に達したのは、9年経った2022年でした。そのころの成長率も2.7%(21)→0.9%(22年)→1.4%(23年)…とプラスを記録するようになり、不況は脱出しています。
今年(25年)1月は4.0%もの物価上昇です。その後も3.5%くらいの上昇がずっと続いてきてます。もはや、2%のシチョウアタリは、ありません。

国民は今度は「インフレ」に苦しむようになっています。こんな情勢で、日銀の心配する「デフレへの後戻り」なんてありえません。
しかし、いまだ「デフレを脱却した!」との声は、政府・日銀関係者から聞こえてきません。
ウヤムヤにやり過ごす日本流?みたいですが、むしろ、両者とも「物価と賃金の好循環的上昇」を期待しているようですね。かつてはインフレ対策で賃金を抑え込んだこともありましたが…。

これ以上のアタリ・アタリの「シチョウ」作戦(=インフレターゲット政策)は、続けるほどにインフレを加速させ、大きな損失を招くだけです。国民生活は、賃金(手取り収入)が目減りして消費は伸びず、改善されません。「子育て家庭」など困窮し「年金生活」は成り立たなくなります。

現在は、世界的にもインフレ基調。日銀は、「日本経済の健全な発展」に資するように「物価の安定」という本来の任務に立ち戻るべきでしょう。

企業には、物価を抑え賃金を引き上げられるように、DX(デジタル化) ・GX(グリーン化)などのイノベーション投資を果敢に行い生産性を向上させていって欲しいと思います。

★ 次の一手 一難(デフレ)去ってまた一難(インフレ)。日銀は「異次元金融緩和策」への決別をきちんと宣言し、政府は「財政健全化」に踏み出そう。
いわゆる「財政ファイナンス」(赤字国債の事実上の日銀引受け)をこのまま続けると経済の活力が失われ国滅ぶ。

◎「イゴノミクスの世界」格言と法則

「シチョウ知らずに碁を打つな」という
日銀は、シチョウを知らないフリをしている場合ではない。国民のためにならない明哲保身に日銀の存在意義はない。

※「シチョウ」については、拙著『イゴノミクスの世界』2019年、pp.214-217、参照。碁盤の図の作成には、日本棋院の棋譜編集ソフト(Kiin Editor)を使用しています。

※ トップの画像は、私の好きな「二間高バサミ」で、いま〇印の黒が打たれたところ。この図は白に間違いがあり、次は白番ですが黒に囲まれた白は取られてしまいます。また、△のところは「シチョウ」を示しています。

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